itti(イッチ)の部屋

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『気付いたんだけど。』07

お待たせいたしました。
沼の淵から浮上しましたイッチです。
続きを描きましたので、よろしかったらご覧ください。
小説「気付いたんだけど。」も完結です。m(__)m






オレは一体何をしているんだ?



寝袋に避難すれば、吉田の体温を感じる事はなかった。なのに...


手も足も出ない状況で、顔だけ出ているオレの唇に吉田はキスをした。
...そして、オレも受け入れてしまって.......。


「ど?気持ち悪くないだろ⁉」


と、少し顔を上げるとオレの目を見てそんな事を言う。


「気持ち...悪くは、ないけど..........」
精一杯のオレの返答。目を合わせるのが恥ずかしい。


「だから、そういう事なんだって。大村、俺の事好きなんだわ。だから気持ち悪くないのさ。」


吉田のもっともらしい言い方が気にくわないけど、なんとなく腑に落ちる。
手を握っていた時も、ベッドで寝ている時も、一度も気持ち悪いと感じた事はない。別の友人には、くっつくなよ、と蹴飛ばしていたのに...。



「.................」



「重い。オレの上からどいてくれ。」


気持ちとは裏腹に、顔を横に向けるとぶっきらぼうに言ってしまった。
ここで自分の気持ちを言ったとしても、やっぱりな、といって笑われるのがオチだ。結局オレはキモイ奴と笑われて終わるんだと思う。


いつまでも、胸の上に手を置いたままの吉田に、「ふざけてないで、早く寝ろ。」
それだけを言うと目を閉じたオレ。



ふぅ~、っという吉田の呆れたようなため息が、オレの耳元で聞こえる。と、ぐわんっと寝袋のまま身体を抱えられ、ベッドの上に放り投げられた。
あまりにも勢いよくバウンドしてビックリしたオレ。


「ア?....な、何を.....」
ベッドの上で、寝袋に埋もれたオレに、またもや吉田の唇が迫ってくると、あっけなく2度目のキスをされてしまった。


焦ったオレの、寝袋のファスナーを降ろした吉田は、ギュッと身体を抱き締めてきた。


もう、何が起こったのか頭の中はぐちゃぐちゃ。吉田の訳のわからない行動に、オレの頭はついていけない。


「大村が俺を好きなように、俺だって最初に出会った時から好きだったんだ。気づいてないだろうけど........。」


「え?...なんて言った?...」
オレは耳を疑った。最初に出会った時って.....


「大村って、案外女子にモテんのな⁉可愛い系だからか。」


「は?...可愛、い?」


「俺がいっつも横にいるんで、お前を紹介しろって言われてたんだ。...だから、そいつらの事、全部食ってやった。」


「えっ?」


「俺とヤっといて、お前とは付き合えないだろう⁉」


「.................」


そこまで言われて、なんとなく頭の中で整理がついた。


オレが大学に入ってからモテなかったのは、全部吉田のせいだったのか?!こいつが、オレに来るはずの女の子を食い散らかして邪魔してたんだ。


「てめぇ.....」
身体を離そうと、もがきながら言うが、吉田の力は強くて。


更に締め付けてくると「俺の気持ちに気付かないお前が悪い。」と言い放つ。


「俺が女の子といても平気な顔しやがって、こんな絆創膏でやっとヤキモチ妬いてくれるって.........、長い道のりだったよ。」
そういうと、やっと力を緩めた。




「まさか、吉田がここで暮らすってのは、オレが女の子を連れ込まない様にするため?」


「当たり~、絶対阻止してやるからな‼」


まるで、小学生レベルの独占欲に呆れるが、それでも吉田がオレを好きでいてくれたことは嬉しかった。


「吉田.....お前ってバカだな。もっと早く言ってくれよ。そしたらこんな遠回りしないですむのに...」


「...そうだな。...でも、俺だって正直怖かったんだ。嫌われたくないもんな。」


「オレと一緒か。ふふっ、.....」


「俺たち、両想いになった?」


「...そうだな、そういう事になるかな?!」


「じゃ、俺と付き合う?」


「...うん、...付き合ってもいい。」


「.....、良かった~。」


安堵の表情を浮かべると、寝袋から出たオレの背中に手を回して身体ごと引き寄せる。
鼻先が当たりそうな程見つめ合うと、吉田は熱い目をして言った。


「...キスしてもいい?」


「もうしたじゃん。2回も!」
オレは、少しからかう様に言う。


「だからさ、...これは俺と大村が付き合って初めてのキス。ファーストキス。」


「.....」


吉田の頭の中は、イマイチ理解に苦しむけど、まあそんな所も好きな訳で.......。
結局オレはこいつを受け入れる事になるんだと、心の中で確信した。


ゆっくり目を閉じると、吉田の暖かい手のひらがオレの頬を包む。それから触れる弾力のある唇。吉田の言うファーストキスの意味が、なんとなくわかる気がした。



気持ちが伝わると、男同士のキスでも違和感はない。
不思議だけど、触れた場所から浸透する「好き」っていう気持ち。
この気持ちは溢れそうで、でも、零れ落ちる事はない。
互いの身体を包み込むと、すべてが吸収されていくようだった。


いつもは気にしないたった一枚の絆創膏。なのに、剥してみたら気づく事もある。
そして、明日にはもっと絆創膏が増えそうだと、互いの口元を見合うと想像できた。




------------------ 完 -----------------------


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本当に有難うございました。
ぼちぼちと、歩んでまいりますので、よろしかったら又覗いてください。

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