itti(イッチ)の部屋

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【迷いびと】ss

トゥルルルル...


住宅街に建つ緑に囲まれた一軒家。
そのリビングに鳴り響く電話のベルが、書斎で缶詰状態の僕の意識を飛ばした。


普段は鳴らない固定電話が鳴り、僕はパソコンから目を離して立ち上がると書斎のドアを開ける。
電話の前に進むが、液晶画面の発信元を目にすると、受話器を取る気が失せた。


そこに表示されているのは、僕の記憶の中でも最悪の人物の名前。出来れば二度と顔を見たくはない。言葉を交わすのも避けたい相手。


「はい、....」
いつまで経っても鳴りやまないので、渋々受話器を取ると、僕はそのひとことにありったけの嫌悪感を表した。なのに『圭佑、...俺さ、入院していたんだ。でも、一昨日退院出来て.....』と、明るい声で話し始める。


「.....へぇ、.....で?」
さらに、突き放した言い方をすると、さすがに空気をよんだのか黙り込んだ。


戸城 将生(トシロ マサキ)


彼は僕のかつての恋人。
180センチの長身で、顔立ちこそ綺麗な男だが、着ている服はよれよれの白いシャツにジーンズ。まるで一切の華やかさなんて無視した出で立ち。
二つ歳上で、大学のサークルで知り合った僕たちは、互いに同性愛者だと分かると直ぐに恋に堕ちた。


共に文学を愛し、小説家への道を模索しながら毎日の様に語り明かした日々。しかし、深い関係になるのには時間がかかった。
それは彼の性格によるもので、おもえばあの頃から彼は病んでいたのかもしれない。


降りしきる雨の中を傘もささずに何時間も歩く。行き交う人を交差点でじっと眺める。ビルの屋上に無断で入って大きな声で空に向かって叫ぶ。
・・・彼の奇妙な行動は、僕を不安にさせた。


肌を重ねても、彼の心の中には靄がかかっていて、この手に掴む事は出来ない。いつしか僕のこころも辟易してしまい、大学を卒業する頃には連絡も途絶えた。
かれこれ4年。彼からの連絡も無いまま僕は平穏な生活を送っていたというのに-----


「これから、会えないか?ほんの少しの時間でいいんだ。」
「---------いきなり、な誘いですね?もう僕の事は忘れたと思っていました。それに----」
と言って言葉を切った。








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