「虹の橋を渡って」その後のふたり。
埼玉の支店に転勤となった僕の恋人は、相変わらず忙しそうで。
今年の六月で、僕らの交際も八年目を迎える。高校生の僕が、大学生の的場さんに話しかけられて、直ぐに付き合って欲しいと言われた。あの頃の僕は、自分が異質な人間なんだと卑屈になっていて。
同級生達が、彼女を作ることに必死になっている時、僕は美術部の先輩に憧れていた。
けど、先輩は男で.....
何となく耳に入る言葉で、僕の様な人間が他にもいるらしい事は分かっていた。
声には出さなくても、同性を好きになってしまう人はいるんだと。ただ、僕の知る限り、僕の周りにはいなかった。
その事が、自分自身をどんどん不安にしていく。
学園祭の時、卒業生の的場さんが遊びに来ていて、知り合ってからの僕の人生は大きく変わったと思う。初めて出会った、同性を好きになる人に僕は興味が湧いて、他にも沢山いることを知った。
「芳樹だから、ヨシくんて呼んでいいかな?」
そう言われて、のぼせる自分の顔を隠した。恥ずかしかった。カラダの奥が、ジーンって疼いた事を思い出す。
-----
突然の昔の出来事が、まるで昨日の事のように思い出されると、僕は的場さんのベッドの上でうたた寝していた事に気付く。
慌てて体を起こすと、
「ヨシくん、起きたんだ?疲れてたんだね。」
その声は、机でパソコンに向かっている的場さんの声だった。土曜日なのに、持ち帰った仕事があるからと、僕は待ちぼうけを食らってふて寝したのを思い出した。
「まだ終わんないの?僕、どのくらい寝てたんだろう…。」
「寝息が聞こえ出したのは30分位前かな?凄く気持ち良さそうだったよ。寝顔も可愛かったし。」
的場さんは、未だに僕を可愛いとか言うんだ。もう24歳の男なのにさ.....
「もう夕方だよ!?お腹減ったなー、終らないなら僕ひとりで買い物に行って来るけど。」
ベッドに腰掛けて、的場さんの背中に声を掛ける。すると、椅子と一緒に的場さんのカラダがクルッとこちらに向いた。
「俺も、お腹が減った。でも...」
言いながら隣りにやって来ると、肩を押されて、僕は又ベッドの上に沈んだ。
「何?」
的場さんの顔を見上げると、
「先にヨシくんを頂いてから、ご飯はその後だな。」
的場さんの優しい眼差しは僕を動けなくさせて、僕の空腹は愛で満たされるような気がした。
**こちらは、以前書いた「虹の橋を渡ったら」SSの続きの続きです。
昨日、落書きをしていたら、こんな何気ない二人の日常が浮かんできて...
ヨシくんと的場さんの、8年越しの愛情が冷めていない事をお伝えしたくって。
この先も、ヨシくんがふて寝をする事はあるでしょうが、結局は的場さんの愛に包み込まれてしまうと思います。
妄想話にお付き合い下さり 有難うございます