itti(イッチ)の部屋

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【迷いびと】ss 続き

 それに・・と言いかけて言えない言葉
’奥さんがいるのに’-----


 1年前、僕の勤める出版社に顔を出した友人から、彼が結婚したという話を聞いた。
僕は耳を疑った。彼は同性愛者、のはず。奥さんをもらうなんて頭の片隅にも思っていなかった。
でも、結婚したんだ。


僕から離れた後、何度か直山賞の候補にあがっていたのは知っている。でも、いまだに受賞は逃している。
どんな経緯があって、彼が異性と婚姻関係を結んだのかは解らない。それにもう、僕にとってはどうでもいい事で。
なのに、どうしてこんな電話をしてくるのか----


僕がしばらく口を閉ざしているので、堪らず彼がこう言った。
「結婚は間違いだった。」と。


その言葉を聞いて、僕の中の何かが音をたてて崩れてゆく。ガラガラと、心の隙間に埋めたタイルの一枚一枚が剥がれ落ちる音がした。
「---そんなこと僕は聞いていません。あなたが結婚したかどうかも知らないんですから。」

「すまない、そうだったな。---」

落胆している様子がわかると、僕は何を思ったのか「少しなら、いいですよ。」と言ってしまった。自分でもなぜそんな言葉が出たのか不思議でならないが、きっと崩れたタイルの奥から漏れ出た僕の気持ちが言わせたのだろう。
昔を振り返れば、疲れ切った自分の姿しか浮かんでこないというのに---


「有難う圭佑、有難う---」


受話器の向こうで涙交じりの声が聞こえると、綺麗だった将生さんの顔が浮かんだ。
今でもあの顔のままなんだろうか-----
あの人に抱かれた女性はどんな人だったんだろう。
ふと、そんな事まで詮索してしまう。
もう、顔も見たくはないと思っていたのに-----


4年の歳月を経てもなお、僕の心は迷いっぱなしだ。


-------------------終--------------------



将生のイメージ
 ラクガキです


プロフィール画像をまたまた変えたんですが。


 明日は仕事だというのに、6時起きだというのに・・・
深夜1時、まだパソコンの前に居るイッチで~す ww


お気づきでしょうか、又プロフィール画像を変えたのですが。


「ユーリ オン アイス 」というアニメの中のロシアのフィギュアスケートの選手がいるんですが、メッチャ可愛くて!!(#^.^#)


金髪に弱い私です ww


で、描こうと思ったんですが、他にスゴ~~~~~ク沢山の方が描かれているので、この際妄想ついでに今から10年後のユーリを描いてみました。
言わなきゃ誰も気づかない www


プルシェンコよりもイイ男になっていると良いな(*^▽^*)
あ~~~~、どうして金髪に心惹かれるんだろうか・・・


なんだか画面が大きいと粗が目立つけど 💦
ま、こんなもんでしょ・・・ww
 
ヴィクトルと勇利のカップルは、本当にたくさんの絵描きさまが描いていらして、私なんぞは恐れ多くて・・・・・


いつかもっと、塗りもうまくなれたらいいのだけど。
自己中の私は勉強が苦手。


また観て下さると嬉しいです。
有難うございました。




【迷いびと】ss

トゥルルルル...


住宅街に建つ緑に囲まれた一軒家。
そのリビングに鳴り響く電話のベルが、書斎で缶詰状態の僕の意識を飛ばした。


普段は鳴らない固定電話が鳴り、僕はパソコンから目を離して立ち上がると書斎のドアを開ける。
電話の前に進むが、液晶画面の発信元を目にすると、受話器を取る気が失せた。


そこに表示されているのは、僕の記憶の中でも最悪の人物の名前。出来れば二度と顔を見たくはない。言葉を交わすのも避けたい相手。


「はい、....」
いつまで経っても鳴りやまないので、渋々受話器を取ると、僕はそのひとことにありったけの嫌悪感を表した。なのに『圭佑、...俺さ、入院していたんだ。でも、一昨日退院出来て.....』と、明るい声で話し始める。


「.....へぇ、.....で?」
さらに、突き放した言い方をすると、さすがに空気をよんだのか黙り込んだ。


戸城 将生(トシロ マサキ)


彼は僕のかつての恋人。
180センチの長身で、顔立ちこそ綺麗な男だが、着ている服はよれよれの白いシャツにジーンズ。まるで一切の華やかさなんて無視した出で立ち。
二つ歳上で、大学のサークルで知り合った僕たちは、互いに同性愛者だと分かると直ぐに恋に堕ちた。


共に文学を愛し、小説家への道を模索しながら毎日の様に語り明かした日々。しかし、深い関係になるのには時間がかかった。
それは彼の性格によるもので、おもえばあの頃から彼は病んでいたのかもしれない。


降りしきる雨の中を傘もささずに何時間も歩く。行き交う人を交差点でじっと眺める。ビルの屋上に無断で入って大きな声で空に向かって叫ぶ。
・・・彼の奇妙な行動は、僕を不安にさせた。


肌を重ねても、彼の心の中には靄がかかっていて、この手に掴む事は出来ない。いつしか僕のこころも辟易してしまい、大学を卒業する頃には連絡も途絶えた。
かれこれ4年。彼からの連絡も無いまま僕は平穏な生活を送っていたというのに-----


「これから、会えないか?ほんの少しの時間でいいんだ。」
「---------いきなり、な誘いですね?もう僕の事は忘れたと思っていました。それに----」
と言って言葉を切った。