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「ジセイタイになった俺」01 bl小説ss

三年前のあの日、金木犀の甘い薫りを吸い込んで、俺の人生も平穏に過ぎていくと思ったのは間違いだったのか…


花の香りも記憶からすっかり抜けた頃、今夜も冷たいシーツを手のひらで確かめては「はァ」っと溜め息を漏らす。


3DKの賃貸マンションの1室。

ルームシェアという名の体裁を取り繕って始めた恋人との同棲生活。

三年前に知り合うと、まるで磁石のS極とN極の様に強く惹かれあった俺たち。


俺、田代真琴(タシロ マコト)と中谷恵(ナカタニ ケイ)が知り合ったのは、共に28歳の頃。


ひとつのビルをいくつかの会社で使っているが、時々エレベーターで一緒になっていた恵と蕎麦屋で相席になった。


その時初めて言葉を交わして名刺を交換しあった俺たちは、字面だけ見ると女性の名前の様だと言って互いに笑い合った。

そんな事がきっかけで、顔を見れば挨拶をしたり、ランチに誘ったり。


半年ぐらい過ぎた頃には、休日に映画を観たりする仲となる。でも、付き合うタイプの女性の話が出て、俺は正直に自分がゲイである事を打ち明けた。それ程までに恵のことを信用していたからだったが、恵は一瞬躊躇うと目を伏せた。


「そんな事、僕に言っちゃっていいんですか?口の軽い男なら、あっという間にこのビルの人間に広めちゃいますよ。」

そう言うと、顔を上げて俺の目を見る。真剣な、それでいて何処か呆れた様な面持ちで見られると、返答に困った。


「…じつは、最近の俺はキミの事が頭から離れなくて…。たから、ゲイだと告げて嫌われたら、その方がスッキリすると思ったんだ。女性を恋人には出来ない人種だからね。キミとオンナの話はしたくないし…。」

そう言って、彼の視線をはぐらかす。

真っ直ぐになんか見られない。

三十路手前で、周りは子持ちもいるっていうのに、残念な俺に付き合わせるのも気が退けた。女好きな友人と、合コンでもする方が建設的だろう。


「なら、僕と付き合ってみますか?」


「え?……」


喫茶店の向かいに座って、微笑みながら言われると、俺をからかっているのか、とも思えたが、恵の瞳の奥にある揺らぎないものを感じると、俺はニコリと口角を上げた。


あれから三年…

恵がこの部屋に戻って来るのはいつも深夜。


酒の匂いをさせて、吸わない煙草の薫りを纏ってはベッドに潜り込んでくる。


時折は帰って来ずに、ビルのエレベーターの中で出くわす日もあった。


「…お疲れ様です。」

「…お疲れ様…」


そんな他人行儀な挨拶をして、自分の会社のあるフロアに降りた途端、猜疑心が芽生えはじめると自分でもおかしいくらいに狼狽えてしまう。

俺と付き合うと言った恵が、自分からルームシェアを持ち掛けて、このマンションに越してきたが、お互いの仕事量が増えてきたのも事実。


彼を非難したい訳じゃない。

ただ、一緒に飯を食ってテレビの中の話題に参加したいだけ。それだけだ…。


もう何日同じベッドで眠っていない?

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