幼なじみで先輩で...2
教室の窓から入る日差しは、秋だというのにギラギラと苛つく程に眩しくて。
司は立ち上がると窓際の自分の机を少しだけ横にずらした。
ふと、開いていた窓から運動場の人だかりが目に入ると、何やら騒いでいる声が聞こえて気になった。
今は休み時間。次に体育の授業があるクラスの連中が何かをしているのだろうと、直ぐに視線を逸らしたが、「…アオイ、痛いのか?」と言う声が聞こえ、もう一度その人だかりに目をやった。
…葵!?
司の胸がその名を訊いてザワつく。
窓の縁に手を掛けると、下を覗き込んで葵の姿を探した。
人だかりの隙間から見えるのは、地面に転がった葵が膝を抱えている姿。
どう見ても怪我をしているように見える。
眼を見開いた司が身を乗り出そうとしたその時、教室の扉がガラリと開けられて次の社会科の教師が入って来た。
(ちッ…)
扉の方に顔をやると、軽く舌打ちをして席へ戻る司。
でも、内心は気が気でない。葵が怪我をしているらしいと分かれば、直ぐにでも飛んで行きたい衝動にかられ、それを抑えるのに身体中の毛穴が粟立つ。
葵の存在は、司の中でそういう感情を呼び起こす対象になっていた。
ジレンマを抱え、始まった授業にも身が入らないまま、司は窓の外へと意識を向ける。
そんな司の想いも知らず、グラウンドの砂ぼこりにまみれて膝を抱える葵は、ただ痛みを堪えて顔を顰めているだけだった。