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久しぶりにBL小説など ー 泡かたの恋 ー 01

itti(イッチ)

  ー 泡かたの恋 ー   01


高校2年生の冬。

ありきたりな年末年始を経て新学期が始まった。

教室に入ると、俺の席に座るアツシが前の席の杉原と興奮気味に喋っている姿が見えた。


「おはよう、そこ、俺の席」

アツシに声をかけると「おぅ、文ちゃんおはよう」と八重歯を見せて笑う。文ちゃんと呼ばれている俺は、奥田文貴(オクダフミタカ)というのだが、フミの字をとってブンちゃんと呼ばれている。


アツシとは小学校から一緒なので、仕方なく許しているが、他の生徒はちゃんと奥田と呼んでくれた。


「なぁ、さっきオレ職員室に行ったんだけどさ、なんかうちのクラスに転校生来るみたい」

そう言うと立ち上がり俺に席を譲った。


「え、この時期に?もうちょっとで3年生なのに、珍しいな」

率直な俺の感想だった。


「担任と喋ってたから顔見たんだけどさ、すっごい美人だった」

「え、女子?」

「あ、いや、おとこ」

「男に美人って」

「いや、まあ、顔見たらわかるって」


そう言ってアツシは自分の席に戻って行った。

「いくら美人でも男じゃなあ。女子なら嬉しいのにさ」

前の席の杉原はニヤけた笑みを浮かべて言う。


俺にとってはどうでもいい話。ただちょっとこの時期に転校してくる事が気になった。訳ありなんだろうか、なんて、余計な詮索はやめよう。



暫くして、ホームルームの時に担任の後ろについて教室に入ってきたのは例の転校生。


みんなの視線を一斉に浴び、居心地の悪そうな表情を浮かべていたが、アツシが言った通り眉目秀麗な顔だちは男子にしては目立ちすぎる。クラスの女子は、声にならない声を上げていた。

実際、このクラスの女子と比べても負けないぐらいの顔面強者。


センター分けの前髪から覗くのは、くっきりとした二重瞼に長いまつ毛。キュッと上がった口角が可愛らしくも見える。


「えー、今日から新しくクラスメイトになった金森くんを紹介します」


新年の挨拶も早々に、担任はそう言って隣の男子生徒に視線をやって促した。


「金森拓人(カナモリタクト)です。静岡から越して来ました。よろしくお願いします」


お辞儀をして顔を上げた時、一番奥に座る俺と目が合った。が、直ぐに横を向くと担任の顔を見る。


「じゃあ、席は窓側の一番後ろに」


担任の声で、金森は俺の横の空いている席に向かって来るが、横を通るたびに生徒たちから見上げられ、小さく頭を下げながら席に着いた。


俺は、隣の席に座った金森に声をかけるべきかと迷ったが、担任が話し出したのでそのまま前を向いた。


休み時間になると、一部の女子が金森の席に集まってきて、砂糖に群がる蟻の様だった。


午前中はずっとそんな調子で、金森の前の席の山田も隣の席の俺さえも、彼とは言葉すらかけられない状態。


なんと、初めての金森との会話は男子トイレの中だった。


「隣の席だよね、たしか」

手を洗っていると金森から声をかけられた。

さっきまで女子に囲まれていたのを横目に、トイレに行った俺の後でやって来た様だ。女子から逃げてきたのだろう。


「あ、うん。俺は奥田。…なんかすごいな、金森くん」

「え、なにが?」

「いや、女子にモテまくりじゃん」

そう言うと少し口元をキュッと結んだ。喜ぶでもなく、どちらかといえば迷惑そうな感じ。


「あれは転校生が珍しいからだよ。」

そう言うと「じゃあ」と個室に入って行った。


初めて交わした会話で、あんな事言ったの悪かったかな。ちょっとイヤな奴だったな、俺。

モテるヤツに嫌味な言い方だったかも。


反省しながら席に戻るが、この日は午前で終わり。

席に戻るとすでにアツシが鞄を肩にかけて待っていた。

「帰りにコンビニ行こうよ」と誘ってくる。


「あー、うん」

俺は返事をしたが、ちょっと金森の事が気になった。さすがに女子はもういない。一緒に帰れたりしないかと、少しゆっくりと鞄の中にノートをしまう。


直ぐに金森が教室に入ってくると、アツシが気付いて「金森くん、よかったら一緒に帰る?」と声をかけた。

先を越されて、俺は焦る。


「あ、うん、いいけど」

金森は少し緊張しながらも、笑みを浮かべると答えた。


アツシの良いところは誰に対しても気さくなところ。顔は渋めで17歳には見えないが、大きな口で笑う姿は太陽みたいに明るい男だった。


俺とアツシと金森は、他クラスの生徒の視線を感じながら校門を抜け出た。


「みんな見るのな、金森の事」

アツシが校舎を振り返りながら言った。

みんなの興味が、転校生というだけではない事は分かる。俺もそうだから。


「金森くんて両親のどっちに似てる?母親?」

アツシは唐突に質問をする。


「母親。オレの父親は去年亡くなったんだけど、オーストラリアの血が入ったクォーターで、目の色だけは似たかな」


「え、じゃあ母親と二人暮らし?」

「いや、祖母の家で三人で暮らしてる」

「そうなんだ、貴重な男手だな」

「ふふ、まあね」


アツシのコミュ力高いのが羨ましい。すでに金森の情報がどんどん出てきていた。

それに、アツシに慣れたのか、金森も緊張がほぐれた様な話し方に変わっていた。

俺はそんな二人の会話を聞いているだけ。


「部活は?オレはバスケやってたけど夏で終わり。文ちゃんは陸上部だったんだよな」


「ブンちゃん?」


「ああ、俺の事。アツシは俺の事そう呼ぶんだ。フミタカの文の字をとって。こいつだけだよ、そう呼ぶのは」

短髪の頭を撫でながら、そう言った俺に「小学校から一緒だからな、オレら」とアツシはドヤ顏をする。


「へえ、なんか可愛い。オレは美術部だった」


金森に可愛いと言われると変な気分だが、美術部と聞いて納得した。


「だから色白なんだー、絵なんてオレら描いたことないもんな」

アツシが笑って言う。


「いや、絵は描けるだろ。美術の授業もあるんだから。アツシの絵はへたっぴだけどな」


「は?失礼な」

アツシは金森を挟んで俺の肩を小突いてきた。


「ところで、アツシくんの名字は?」

「ああ、オレは安田。安田敦

「じゃあ安田くん、て呼ぶ方がいいか」

「いや、アツシでいいよ。オレも金森の事拓人って呼ぶから」

「うん、じゃあそうする」


横の二人の会話を微笑ましく聞きながら歩く俺。

ほんの少し羨ましくはあったが、俺はそこまで距離を縮められない。これは性格なんで仕方がない。


「あ、そこのコンビニ寄ろう。肉まん食いたい」

アツシが言うので、俺と金森は頷いて付いて行った。

閲覧頂き有難うございました♥゛

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