ー 泡かたの恋 ー 27
俺が黙っていると、金森が気を使ったのか大きな声で「寝ようか」と言った。
ハッとした俺はまだ歯を磨いていない事に気付く。
「あ、俺、歯を磨いてくるから先寝てて」
そう言うと金森を残して 部屋を出た。
廊下に出てから自分の胸に手を当てると、心臓がドクドクと鳴っていた。
よかった、金森に気付かれなくて…
俺どんな顔してたんだろ
歯を磨きながら飄々と話していた金森の顔が浮かぶ。あんな目にあって辛かったはずなのに…
今まで性的マイノリティーの話は出た事もなく、俺の周りには付き合っている奴が少なかったから気に留めた事がない。
でも、実際は金森のような男もいるわけで、変な話俺が女子に興味のないのはそっちだからか?
自分の事はよく分からない。
◇
部屋に戻ると既に金森は布団に入っていたが、俺が近寄ると目を開けた。
「まだ寝てなかった?」
「うん、なんかちょっと慣れないっていうかさ。いつも一人で寝てるし、こんな風に誰かと同じ部屋で寝るのって修学旅行以来」
「ははは、そうだったんだ?俺やアツシは大体夏の合宿で雑魚寝してるからな。特に気にしないっていうか……」
そう言ったが、本当はちょっと緊張している。金森と二人きりでいる事もだけど、布団から顔だけ出した姿がなんというか変に可愛く見えて、同じ男なのに視線を合わせるのが恥ずかしくなった。
「オレはひとりっ子だし兄弟の感じが分かんないけど、奥田の姉さんとかどんな感じ?」
「え?……どんなって、とにかくうるさいし高圧的だしあれが女だと思った事はないな。妹も一緒」
「でもきっと奥田の姉さんなら美人そう」
「えーーっ、家でのアイツを見てると全くそうは見えないな。まあでも、正月は男と初詣に行ってたらしい」
「へえ、いいなぁ。恋人とかいるっていいよな」
「え?…金森って恋人とかほしい人?なんか一人で大丈夫って感じだし、モテるから特別な誰かといるって想像出来ないけど」
俺は、金森が来てから女子とのうわさが絶えないのでそう言ってみた。
「女の子はさ、見た感じ可愛いし別に嫌いじゃないけど、付き合うって事は肉体的にも繋がるって事じゃん?それはオレには無理だから」
「あ……うん、そうだったな」
改めて金森がゲイだという事を思い出す。
「あのさ、金森は男と…キ、ス、とか」
「出来るし、したいと思うよ」
「え……、じゃあした事あるんだ?」
「ファーストキスが幼稚園の時で男の子だったな。次が小5のとき」
「し、小5??」
「隣に住んでたふたつ上の男の子でさ、いわゆる思秋期?急に性に目覚めたらしくて、キスってどんなもんだろうって。オレで試したんだろうな」
「は、ぁ……。そんなもん?」
「奥田は?キスした事ある?」
「は??!俺?……」
「あ、ないんだ」
「……、そ、そんなの…、付き合った女もいねぇのにある訳」
「じゃあ、オレとしてみる?」
「は?」
「ちょっとこっち来て」
金森は布団をめくって上体を起こすと俺の顔をじっと見た。