ー 泡かたの恋 ー 29
俺の心臓は飛び出しそうなくらい跳ねている。
なのに、頭の隅ではこれがファーストキスなのかと、そんな疑問が浮かんでいた。
動けない俺の隣に、金森はゴロリと寝転んだ。
「どうだった?ドキドキした?」
そんな風に聞かれると正直に言えない。
「あ、でもコレは奥田のファーストキスにしないでね。ちゃんと好きな子とするキスがファーストキスなんだからさ」
金森は俺の隣でそう言った。
確かに俺も疑問に思ったけど、はっきり言われるとなんだかモヤっとする。
まるで手が触れたぐらいの感覚なのか。
金森にとってのキスは特に意味の無いもののようだ。
「ゲイの人ってさ、誰とでも簡単にキスするのか?」
そんな風に尋ねると、金森は横を向いて俺の顔を見た。
さっきまで高鳴っていた心臓は、今はすっかり静かになっていて、軽く怒りの感情が芽生えてきた。
俺は金森に弄ばれた様な気がして、金森の目をじっと睨み付ける。こんな感情は初めてだ。
「…酷い言い方だなぁ。誰彼なしにする訳ないじゃん」
眉根を寄せて言う金森だった。
「じゃあ、どうして俺に」
「奥田に経験させてやろうと思って。…ていうのは建前で、なんとなくオレがしたかったんだよね」
「え、」
「奥田はオレがゲイだって告白しても嫌な顔しなかったし。受け入れてくれるかもって思った」
「それは……金森の個性だと思ってるからで。ただちょっと危ういかもって心配はしてる」
「はは、心配されてんの、オレ」
「そりゃそうだよ。先輩にも付いてく様な奴、心配するだろ。それに、前の学校でそんな目にあってるなら尚更」
「そうか、ありがと」
横たわりながらそんな会話をする俺達。
ただ、金森が俺に何かを求めている事だけはわかった。