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SS 「扉の向こう側」BL小説

蝉の鳴き声も止み、涼しさを求め始める頃、此処に来ればオレの身体と心は満たされた。


そんな日々を送る部活も、もうすぐ終わりを告げてしまう。


3年生は次の試合が終わったら引退だ。

次に部長になるオレは、その日400メートルの自主練を終えると、仲間が帰った後もロッカールームに座り込んで黄昏ていた。


高校に入って1年半、片時も離れたくない人が此処にはいる。ひとつ先輩の安西さんだ。


その人は男で、中学まで普通に女の子と付き合ってきたオレには、同性に心を奪われるなんて青天の霹靂。

でも、初めて陸上部の部活を見に行った時、風を切って校庭を走る安西さんに、一目惚れをした。


しなやかな筋肉と、風になびくサラサラの黒髪。身長は高くは無いが、均整のとれたスタイルで、カモシカの様に無駄なく空を斬って走る姿。そして、何よりも惹かれたのは、爽やかな笑顔とオレにだけ見せるはにかんだ眼差し。


「安西さん、受験する大学決まったんスか?」

汗に濡れたシャツをたくしあげながら聞くと、隣で同じようにシャツを脱ぎすてた安西さんがオレを見た。思わずオレの視線が安西さんの肩から流線型を描く背中に移ると、気付かれたのか脱いだシャツで身体を隠される。


「あ、うん。一応担任にはオッケーを貰えてる。無理は禁物、なんだってさ。学校も合格者を出さない事には、新入生の数に響くらしいからね。」

そういうと、バッグから新しいタオルを出して身体を拭いた。


「寂しいな、ここに安西さんの姿がなくなるなんて。オレの唯一の憩いの場所なのに。」

「ははは、透の憩いの場所か...。それは、此処にいる僕の事も含んでって意味かな!?」


「勿論、だからこそ癒されるってもんです。オレ、安西さんの事、大好きなんですよ!?気付いてましたか?」


「...まぁ、普通に気付くよね。だってこうして僕を見る透の目にヤられちゃってるんだから。僕も好きだよ。」


「...マジ、ッスか?オレ、本気にしちゃいますよ。ってか、好きの意味分かってる?」

オレは焦る。同性に対して好きと言うのは、友達としての意味を持つと思うからだ。オレのは違う。異性に向ける感情をそのまま安西さんへと向けているんだ。


「...勿論。透が僕の事を忘れずにいてくれるのなら、僕は大学へ行っても心は透の元へ置いておく。そういう好き、って事だよ。」


「安西さん...」


オレは胸が詰まりそうになると、安西さんの細くてしなやかな腰に腕を回して引き寄せる。


「心をオレの元に置いてゆくのなら、次の扉を開く事を許してくれますか?オレが安西さんさんの元へ行くことを許してくれますか?再来年、また同じ景色を一緒に眺めてくれますか?」


「やけにお許しを請うんだね!?僕はそんなに偉くはないよ?透がしたい様にすればいい。この腕を払い除けないのが、僕の答えだから。」

そう言うと、ふふ、っと笑った。






***ご覧頂いて有難うございます。

夏休みも終わりを告げる頃、ふと思いついて書かせていただきました。

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