「秋祭り」のあとで。
なんだか朝晩は冷える季節になりましたね~。
暑かったり寒かったりで体調も崩しがちです。
それに色々なイベントも盛りだくさんで、楽しい様な疲れる様な。
田舎ではこの時期に秋祭りがあるんですよ。
五穀豊穣って言うんでしょうか?
子供の頃はなんだか分からなかったけれど
すっごく楽しかった気がする。
銀玉鉄砲をジャンジャン打ちまくって
今考えたら危ないよね!
もちろん顔は狙ったらダメっていう暗黙のルールがあった。
けど、生足にガンガン当たって痛かったわ~(´;ω;`)ウゥゥ
大人になると、昔の同級生に会ったりなんかして
ちょっと照れる場面も・・・
ああ、懐かしい。
今でもちょっとだけワクワクするのはどうしてだろう?
今日は先日のお月見イラストを変更しました。
秋祭りで田舎に帰省した元カレとのやり取り。
遠恋は無理だと、諦めて別れてしまった恋人たち。
今夜はビールの力を借りて気持ちを伝えたい。
そんなひとコマの物語です。
右(喜多川 公介)
左(松本 優)
***
毎年、オレの住む地方では、10月7日から8日にかけて地元の秋祭りが行われていた。
オレ、喜多川公介は、高校を卒業すると地元の小さな会社に就職したが、今年で5年め。
なんとなく仕事も覚えて来て、少しは余裕が出てきた頃だ。
そして今日、高校の時付き合っていた松本優が地元に帰って来た。
優は、東京の大学に進学して、そのまま東京の企業に就職。
高2から卒業するまでオレたちは付き合っていたが、田舎にゲイが二人。
隠していても、互いの視線を追えば興味を持って惹かれ合っていることはすぐに分かった。
どちらからともなく声を掛ければ、恋人同士になるのに時間はかからない。
学校でも家でも、オレと優は互いの本能のまま求め合っていたが、高校を卒業すると進路が違う二人は離れざるを得なかった。
地元に残ったオレと、東京の大学に行った優。
遠距離で付き合おうかと思った事もある。でも、互いに束縛し合うのは気が引けて、オレから別れを切り出した。
それでも、毎年この時期になると優は帰って来る。
縁側でオレと酒を飲むのが楽しみだと言って、まるで別れた事なんか忘れているようだった。散々飲んでは、都会の暮らしが大変だと言って愚痴をこぼす。
だったらこっちに帰ってくればいいのに-----
喉元まで出かかった言葉をオレは毎回呑み込んだ。
それを言ってしまったら、その次を求めてしまう自分が分かっていたから。
「公介はいいよな。地元で友達や知り合いに囲まれて、何処に行ったって不安なんか無いんだ。俺は毎日満員電車に乗って上司の顔色伺って不安だらけだよ。」
「そんな事・・・、オレだって毎日不安を抱えているさ。やっと仕事にも慣れて来たばっかりで、まだまだ怒られる事もあるし。」
「それでも、家に帰れば飯も風呂も、用意されているじゃないか。公介の不安は家に戻れば消えるんだよ。俺のは違う。帰ってからもひとりきりで、寝ても冷めても不安だらけだ。」
いつになく愚痴の矛先がオレに向いている様な気がして、ビールを進めるのは止めておこうと思った。優は酒乱じゃないけれど、大抵は愚痴を吐いてスッキリしたら眠ってしまうのが常だった。オレは、年に一度くらい、そんな優の寝顔を見る事が許される。
昔のオレならとっくにその無防備な唇を奪っているところだ。
でも、今は友人の間柄。
そんな事は出来ない。してはいけない事だと分かっているさ。
「優、そろそろ送ってやろうか?お前悪酔いしかけてる。」
「いいって!!まだ平気だ。こんなの仕事でいくらでも飲めるようになってんだ。帰りたくなったら一人で帰るし。」
「-----そうか?!ならいいけど。そういや、お前髪の毛染めた?」
「は?今頃?気付くのおっせ~よ!!くせ毛だし、真黒だと重い印象になるから染める様に言われたんだ。」
「え?誰に?」
「誰にって.........。誰だっていいだろ?!」
「.......、まあ、いいけど。」
「いいのかよ?!聞けよ!!俺に忠告する人間が居るって事だよ?お前以外に!」
「.............、それは.............だって、オレはお前の友達だし。他にもそういう人間がいたっていいだろ。もし、友達以上だったとしても......、オレは何も言えない。」
「いいの?それでいいのかよ?!東京はゲイがゴロゴロいるんだぞ!(ウソ)俺なんか電車に乗ったら痴漢されちゃうんだからな!!」
「は?........まさか。」
「そのうち変な男に摑まって、秋祭りにも帰って来れなくなるんだから。そしたら公介とは一生会う事もないな。」
「おいおい、痴漢からなんで秋祭りに帰って来れない話になるんだよ.....。」
「だって、.........だって、好きなヤツが出来たら、そういう事になるだろ?公介は友達。友達よりも恋人を優先するって事だよ。分かってんのか?」
「...............、」
オレは言葉が出て来なくて、そこにあったビールを一気に飲んだ。
喉がしびれる様に苦くて、胃袋から喉元まで熱い血が滾って来ると、優の目を見る。
半泣きしそうな優の瞳は、酒のせいかかなり充血していた。何かを訴えている様な眼差しを見なかった事には出来ない。
オレは優の腕を取ると言った。
「変な男に摑まる前に、オレが捕まえておく。優を他の男に触らせない。だから.......」
「だから?」
「......だから、離れていても、オレのものになってて。毎晩愚痴を吐いてもいいから、オレに電話して来い。朝まで聞いてやる。」
「.......公介、........やっと言ったな。その言葉訊くのに何年かかったと思ってんだ?!」
「優.......」
オレの膝に置いた優の片手がそっと胸に這い上がってくると、そのまま顔を埋めて熱の籠った額を押し付けて来た。
その額にかかった髪をすくい取って、ツルンとしたおでこにキスを落とす。
5年ぶりに触れる優の肌は、遠い記憶と一緒にこれから重ねる幸せの数を刻んでくれることだろう。
秋祭り、来年はオレが東京にいるかもな............?!
----おしまい----
**長々と読んでくださって有難うございます。
皆さんも、地元のお祭りを楽しんでくださいね(*^^*)